ノボ ノルディスク (本社:デンマーク) は、1923年のノルディスク インスリン研究所での同社初のインスリン製剤の発売から数えて、今年 (2023年) で創業100周年を迎えました。その記念事業の一環として、デンマークライフ財団との共催で、未来の科学者を目指す世界中の若者100人をデンマークに招待して、「フューチャーサイエンティストサマーキャンプ」(以下 キャンプ) を、8月6日~12日に開催しました。このキャンプの目的は、科学に興味のある若者たちにインスピレーションを与え、STEM教育*支援を通じて世代を超えて変革をもたらす人材の育成に貢献することです。使用言語は英語、しかも日本から遠く離れたデンマークでの開催という条件にもかかわらず、日本からは300名を超える応募がありました。厳正な審査を経て選ばれた10名の若者は、期待と不安を胸にデンマークに向けて出立ち、貴重な7日間を過ごしました。

 

* STEM教育:科学・技術・工学・数学の教育分野の総称。これら4つの学問の教育に力を注ぎ、IT社会とグローバル社会に適応した国際競争力を持った人材を多く生み出そうとする、21世紀型の教育システム。

そしてキャンプ終了後の8月27日、ノボ ノルディスクの日本法人であるノボ ノルディスク ファーマ株式会社 東京本社 (東京都千代田区) にて、キャンプで得た学びを報告するための成果発表会が開催されました。発表会のテーマは、「もしノボ ノルディスクの社員だったらどんなプロジェクトを提案するか」、「今後のノボ ノルディスクに期待すること」、「キャンプで学んだこと、印象的だった経験」で、それぞれがプレゼンテーションを行い、素晴らしい意見提案が行われました。

「留学中の生活を支援する応援プログラムの設立」を提唱した学生は、自分がノボ ノルディスクの社員だったら、海外で広く利用されているGAP YEAR (ギャップイヤー:大学進学が決定した学生が、進学時期を1年延ばして、海外留学などの自己研鑽を利用する制度) をより使い易いものにするため、世界中で事業を展開するノボ ノルディスクが学生を雇用して、彼らが留学先で自立できる制度を作りたいと提案しました。別の学生は、キャンプ中に日本の給食の画像を見せたところ「こんなおいしそうな食事を毎日食べられるなんて!」と驚嘆された経験から、栄養バランスの取れた日本の給食は、糖尿病の予防食としても機能するのではないかという気づきを得て、ノボ ノルディスクとともに「世界の子供たちが、将来糖尿病にならないための食育プログラムを提供したい」と提案しました。

またある学生は、今回のキャンプについて「幸運にも私たちはデンマークに行く機会を得たが、私たちと同じ夢を持つ多くの学生は参加できなかった」ことから、「医薬品に関する意見を共有するプラットフォームの構築」を提案し、世界中の若者が自分のアイデアと才能をノボ ノルディスクに提案する機会を持ち、同時に会社側も若者たちの創造性溢れる意見や考えを知り、実際の製品開発に応用できる、と呼びかけました。

その他にも、今回のキャンプ参加者が成人後に再集結して、再び親交を深めると同時に「ノボ ノルディスクに恩返しする同窓会企画」、ノボ ノルディスクで働く研究職の多様性に着目し、もっと彼らの「顔が見える情報発信のあり方」、日々疾患と闘う患者さんがグループを作り、「治療に対する要望や将来に対する不安などを共有できる場所の創設」など、さまざまなアイデアが提案されました。

ある学生は、ノボ ノルディスクのペン型インスリン注入器がデンマークでは薬局を通じてリサイクルされている事実を知り、現在はまだ再利用が難しい「金属製注射針の代替素材」を提案し、「遺伝学に興味がある」という別の学生は、今後のノボ ノルディスクに対する期待として「希少疾患に対する遺伝子治療の開発推進」を挙げました。今回のキャンプのメイン施設「ライフキャンパス」の充実ぶりに感銘を受けたある学生は、日本にも同様の施設があれば将来有望な若者たちが日本でも自分たちと同様の体験ができ、またノボ ノルディスクについて知り、将来この会社で働きたい!という動機づけにもなると、「ライフキャンパス日本支部の創設」を提案しました。

プレゼンテーション後の質疑応答でも、活発な意見交換が行われました。「いつから給食に着目し始めたのか?」と聞かれた学生は「日本にいる間は当たり前すぎて、その価値に気づかなかった。今回のキャンプを通じて、改めてその価値を知った」と述べました。別の学生は、「患者さんの不安な気持ちを引き出すには、どんな工夫が必要だろうか?」という質問に、今回のキャンプでは、同じ日本からの参加とはいえ、全く初対面であった自分たちが、現地で親密な関係を構築できた経験を振り返り、「(たとえば糖尿病など) 同じ背景を共有するグループの中であれば、普段はあまり口にできない自分の気持ちを、周囲に打ち明ける引き金になるのではないかと思う」と述べました。

 

学生の1人は、プレゼンテーションで「100人の若者たちは、将来きっと一廉の人物に成長しているに違いない」と発表しましたが、日本から参加した10人もまた、将来への期待と決意を新たに、新たな一歩を踏み出しました。