ノボ ノルディスク ファーマ株式会社(代表取締役社長:小谷啓輔、本社:東京都千代田区)は、本日6月19日、週1回皮下投与のGLP-1受容体作動薬「ウゴービ®皮下注SD」および「ウゴービ®皮下注MD」〔一般名:セマグルチド(遺伝子組換え)〕について、肝硬変を伴わない代謝機能障害関連脂肪肝炎(ただし、中等度又は高度の線維化を有する場合に限る)を効能・効果として、製造販売承認事項一部変更承認を厚生労働省より取得しました。
代謝機能障害関連脂肪肝炎(以下MASH)は、代謝異常を背景に肝臓に炎症や線維化を引き起こす慢性進行性の疾患です¹。近年、患者数は増加しており、日本における有病率は約3.0%と推計されています²。
MASHは自覚症状が乏しいまま進行することが多く、肝硬変や肝がんといった重篤な疾患につながる可能性があります。肝がんに進行した場合の5年相対生存率は35.8%と低く、予後不良な疾患の一つです3。また、MASHは心血管疾患リスクの増加に加え4、大腸がん・乳がんなど肝がん以外の悪性腫瘍との関連も指摘されており5、健康寿命に大きな影響を及ぼすと考えられています。
社会的な負担も大きく、2021年の日本におけるMASH関連の直接医療費は約1,800億円、生産性損失は約2.1兆円と推計されています6。今後も患者数の増加が見込まれる中、これまで日本ではMASHに対する治療薬はなく、併存疾患に対する対症療法にとどまっていました。
本承認は、肝線維化が中等度~高度 (ステージF2またはF3) 7の成人MASH患者を対象にした、第3相ESSENCE試験*のパート1に基づくものです。 ウゴービ® (セマグルチド2.4mg)は、MASHの悪化を伴わない肝線維化の改善および肝線維化の悪化を伴わないMASHの消失において、プラセボと比較して統計的に有意に高い達成率を示し、優越性が示されました8。
ESSENCE試験のパート1では、72週時にMASHの悪化を伴わない肝線維化の改善が認められた患者の割合は、ウゴービ®投与群で36.8%、プラセボ投与群で22.4%でした。また、肝線維化の悪化を伴わないMASHの消失が認められた患者の割合は、ウゴービ®投与群で62.9%に対し、プラセボ投与群では34.3%でした7。なお、安全性プロファイルは既存データと一貫しており、新たな安全性上の懸念は認められませんでした。
国際医療福祉大学熱海病院 病院長(試験開始当時 横浜市立大学肝胆膵消化器病学 主任教授)であり、本試験の日本における責任医師を務めた中島淳先生は次のように述べています。
「今回の承認は、日本における初めてのMASH治療薬の登場であり、歴史的に大きな意義があります。これまでMASH領域は有効な治療薬がなく、進行予防の観点からもアンメットメディカルニーズの高い領域でした。MASHを有する患者さんにとって、新たな治療の扉が開いたことは大きな希望の光です。本承認の根拠となったESSENCE試験では、肝線維化の改善およびMASHの消失という臨床的に意義があるエンドポイントにおいて、セマグルチド2.4mg 投与により有意な改善が示されております。今後、医療従事者は、MASHを有する患者さんとともに、より積極的に疾患進行を見据えた新しい治療戦略と未来を築けるようになることが期待されます。」
ノボ ノルディスク ファーマ株式会社 取締役 開発本部長のマルチン ジヒマは次のように述べています。
「MASHは、初期には自覚症状が乏しいものの、時間の経過とともに不可逆的な肝線維化や肝不全、さらには肝がんへ進行する可能性があり、患者さんに重大な健康リスクをもたらす疾患です。また、この深刻な肝疾患は、肥満症や2型糖尿病といった他の代謝性疾患を併存することも少なくありません。ウゴービ®がMASHを有する患者さんに新たな治療の可能性をもたらし、社会全体の長期的な健康アウトカムの向上に貢献することを心から期待しています。」
*本承認の根拠となったESSENCE試験は、従来の疾患名称であるNASH(nonalcoholic steatohepatitis)に基づき実施されたものです。2023年以降、国際的なコンセンサスにより脂肪性肝疾患の名称および定義が見直され、NASHはMASH(metabolic dysfunction-associated steatohepatitis)へと変更されました。両者の臨床像や診療アルゴリズムは概ね一致していることが報告されており、従来のエビデンスは引き続き活用可能であるとされています。また、MASHでは代謝機能障害を基盤とした病態がより明確に位置付けられています。
販売名 | ウゴービ®皮下注 SD ウゴービ®皮下注 MD |
一般名 | セマグルチド (遺伝子組換え) |
効能又は効果 | 肥満症 肝硬変を伴わない代謝機能障害関連脂肪肝炎 |
用法及び用量 | 通常、成人には、セマグルチド (遺伝子組換え) として0.25mgから投与を開始し、週1回皮下注射する。その後は4週間の間隔で、週1回0.5mg、1.0mg、1.7mg及び2.4mgの順に増量し、以降は2.4mgを週1回皮下注射する。なお、患者の状態に応じて適宜減量する。 |
製造販売承認日 | 2023年3月27日 ウゴービ®皮下注 SD |
製造販売元 | ノボ ノルディスク ファーマ株式会社 |
販売元 | ノボ ノルディスク ファーマ株式会社・住友ファーマ株式会社 |
効能・効果、用法・用量についての詳細は添付文書をご参照ください。
ESSENCE試験は、肝線維化が中等度~高度 (ステージF2またはF3) 7の成人MASH患者を対象に、ウゴービ®の週1回皮下投与の効果を評価する第3相試験です。試験は2つのパートから成り、1,200例の患者をウゴービ®またはプラセボに2:1の比率で無作為に割り付け、標準治療に上乗せして240週間投与する計画です。
パート1の主要目的は、ウゴービ®がプラセボと比較して72週時の肝組織学的所見を改善させることの検証であり、無作為割り付けされた最初の800例による中間解析の結果に基づいて承認申請が行われました。
実施中のパート2では、肝線維化が中等度~高度の成人MASH患者において、ウゴービ®の投与によりプラセボと比較して240週時における肝関連事象の発現リスクが低下することの検証を主要目的としています。
ESSENCE試験のパート2は継続実施されており、2029年に試験完了予定です8。
1.Allen AM, Charlton M, Cusi K, et al. Guideline-based management of metabolic dysfunction-associated steatotic liver disease in the primary care setting. Postgrad Med.2024;136(3):229-245.
2.Estes, Chris, et al. "Modeling NAFLD disease burden in China, France, Germany, Italy, Japan, Spain, United Kingdom, and United States for the period 2016–2030." Journal of hepatology 69.4 (2018): 896-904. ※ NASHの日本における有病率
3.国立がん研究センター,最新がん統計,肝がん,肝臓:[国立がん研究センター がん統計]
4.Targher G et al. Non-alcoholic fatty liver disease and risk of incident cardiovascular disease: A meta-analysis. J Hepatol 2016; 65: 589-600
5.Kim GA, et al. Association between non-alcoholic fatty liver disease and cancer incidence rate. J Hepatol. 2018;68(1):140-146.
6.株式会社日本総合研究所. 我が国におけるMASLD/MASH患者の検査診断・治療アクセス向上に向けたレポート. 2026年4月24日, p.8.
7.線維化ステージ (0~1:線維化無しまたは軽度線維化、2:中等度線維化、3~4:高度/進展した線維化)
8.Study Details | NCT04822181 | Research Study on Whether Semaglutide Works in People With Non-alcoholic Steatohepatitis (NASH)
ノボ ノルディスクは、1923年創立のデンマークに本社を置く世界有数のヘルスケア企業です。私たちのパーパスは、糖尿病で培った知識や経験を基に、変革を推進し深刻な慢性疾患を克服することです。その目的達成に向け、科学的革新を見出し、医薬品へのアクセスを拡大するとともに、病気の予防ならびに最終的には根治を目指して取り組んでいます。ノボノルディスクは現在80カ国に約67,900人の社員を擁し、製品は約170カ国で販売されています。日本法人のノボ ノルディスク ファーマ株式会社は1980年に設立されました。
詳細はウェブサイトをご覧ください。
www.novonordisk.co.jp