リサイクル全般が日常生活の一部となっている今日、多くの人々にとってプラスチックの消費量削減は常識となっています。しかし、もしも”第二の人生”を持たない、すなわち第二の用途を持たないプラスチック製品に、あなたの生活が依存しているとしたらどうしますか?

糖尿病とともに生きる人々にとって、インスリンペン型注入器は日々の生活に欠かせない、いわば相棒です。ただし、77%程度がプラスチックでできているインスリンペン型注入器でも、空のジュースボトルや食品パッケージと一緒にプラスチック用のリサイクル回収箱に入れることはできません。現在のガイダンスは国によって異なりますが、ノボ ノルディスク環境戦略事業部バイスプレジデントのドレテ ニールセンによると、多くの場合、使用済みインスリンペン型注入器は一般家庭ごみとして捨てられており、この廃棄方法は、最良の解決策にはほど遠いとのことです。

ニールセンは次のように説明します。「当社は毎年5億5,000万本のインスリンペン型注入器を製造して世界中に流通させており、この数字の増加にともない、当社はプラスチック廃棄物という世界で最も深刻な環境問題のひとつに直面しています。」

「当社はできるだけ環境に優しい素材を使う努力をしていますが、使用済みのインスリンペン型注入器が埋め立て地行きになるなら、最善の資源利用とはまだまだ言えません。そこで当社は、これまで以上に優れた循環型のソリューション探しに取り組んでいます。つまり、当社のデバイスに”第二の人生”を与えるソリューションです。」

リサイクルされたノボ ノルディスク社製インスリンペン型注入器でできた椅子

インスリンペン型注入器は複数の部品からできており、当然ながら、いったん製造ラインを離れたインスリンペン型注入器は簡単には分解できないようになっています。

ノボ ノルディスクではまず、プラスチック部品をリサイクルするため、数あるインスリンペン型注入器の部品を自動的に選別する方法を見つける必要がありました。

「私たちがこの作業を諦めかけていたときに、製造部門のある有能な社員が私たちの望みを叶える機械を設計しました」と述べるニールセン。

実験として、製造後に廃棄されたインスリンペン型注入器を使って機械を試したところ、目をみはる結果が出ました。

「とてもうまくいきました。事実、私たちは廃棄プラスチックを利用し、デンマークのデザイン会社と共同でオフィス用の椅子を作ることに成功したのですから」と語るニールセン。「また、当社の廃棄インスリンバイアルのガラスを溶かしてランプを作り、新しい命を与えることにも成功しました。」

現在の課題は、これまでは販売されないインスリンペン型注入器だけに使われてきたこのソリューションの規模を拡大することです。

「可能です」と付け加えるニールセン。「当社は現在、当社の使用済みインスリンペン型注入器を大規模に処理できる企業と提携すると同時に、材料の活用も徹底しています。」

ただし、全体をうまく動かすには、重要な鎖の輪がまだひとつ欠けています。つまり、ほとんどの国々では、使用済みインスリンペン型注入器を患者さんから回収する効果的手段が整備されていないのです。いわゆる「回収」プログラムです。

「利用者から使用済みインスリンペン型注入器を簡単に回収できる方法を考え出す必要があります。簡単に聞こえるかもしれませんが、かなりの難題であることが分かっています。世界的規模で実現するならなおさら大変です」と語るニールセン。

しかしニールセンは、ノボ ノルディスクが今後数年間にいくつかの国々で試験的な回収プログラムを開始すると見込んでいます。同時にニールセンは、この課題が将来的に製薬業界が一致団結して取り組む課題となることを望んでいます。

ニールセンは次のように述べています。「業界が一丸となってこれを解決できることを願っています。私たち全員で取り組むべき課題であり、拡張性のある単一のソリューションを見つけて、患者さんと私たちの環境への配慮を円滑化するべきです。」

ニールセンは、プラスチックの再利用やリサイクルを行う同社の取り組みが回収プログラムだけではないと強調します。

「私たちは完全に循環型の企業になるという明確な目標をかかげていますので、世界のプラスチック問題の解決に取り組む当社のコミットメントはインスリンペン型注入器のみに終始しません。」

ニールセンはプラスチックの種類に応じて異なるアプローチが必要だと説明します。

「当社は2019年に、当社の研究開発部門や製造部門で、明確で意味ある目的に使われない使い捨てプラスチックを全面的に禁止しました。ただし製造部門には、あらゆる種類の製品で新たな命を簡単に与えることができる上質のプラスチック廃棄物もあります。当社は2000年の初めから、これを可能な限り達成する方向で多くの投資を行っています。」

ニールセンによると、この行動は実を結びつつあり、同社における全世界の製造事業では現在、廃棄物の90%余りをリサイクルしています。

ニールセンは最後に次のように述べています。「当社は長い間、製造部門からプラスチック廃棄物を回収し、その再利用やリサイクルを徹底しています。近年は持続可能性 (サステナビリティ) の考え方に社会が変化しているため、当社がプラスチックを提供する先に当社のプラスチックを持続可能な製品に使うよう要求できるようになっています。現在は、環境配慮のあり方を改善してより循環的な世界をつくるという、私たち全員が強く意識するべき問題の解決に向けて多くの企業や組織が一体となって取り組む、活気に満ちた時代だと思います。」