1型糖尿病の治癒に向かって

1型糖尿病の治癒に向かって

 

ヤコブ ステン ピーターセンが糖尿病の研究に従事してから20年後、彼の娘のヴィータが1型糖尿病と診断されました。これが彼の1型糖尿病の治癒を達成するための個人的な動機となり、ノボ ノルディスク社の幹細胞に関する研究の進展となっています。

20年以上にわたり、ヤコブ ステン ピーターセンは複数の慢性疾患について研究を行い、そのプロセスで5種類の新薬の販売承認獲得に貢献しました。それが、思いがけず、今日のノボ ノルディスク社の糖尿病研究の監督を担う生化学者や医学博士の心の琴線に触れるような、1型糖尿病(あまり一般的でない形態の糖尿病)とともに生きる人々のアンメットニーズだったのです。

「1型糖尿病とともに生きる人々はこの疾病と常に向き合わなければいけないという単純な事実が、常に私を強く動かしています」と、ヤコブは説明します。「他の慢性疾患の患者さんが生きやすいということではありませんが、糖尿病とともに生きる人々、特に子どもにとって、インスリン治療への依存や、絶え間なく続く疾病コントロールは大きな負担となっています。私は常にこの負担を減らす方法を模索しています」

 

糖尿病への取り組み

 

運命によって、彼の背負う個人的な経験が、その先長い間、彼にとっての情熱の根源となることに、ヤコブはほとんど気づいていませんでした。彼が1型糖尿病の治療法を研究し始めてから20年以上経った2016年に、彼の3歳になる娘のヴィータが1型糖尿病と診断されました。

「ヴィータの症状は非常に静かに、また突然に迫ってきたため、私には医師としての知識や糖尿病研究に従事しているにもかかわらず、最初は娘が糖尿病でありうることに気づきませんでした」と、ヤコブは思い出します。「しかし、私が娘の血糖を最初に測定した瞬間はこの先忘れることはないでしょう。そのときやっと、一瞬のうちにヴィータの人生が非常に困難を伴うものになることを理解しました。正に人生を一変させる出来事でした」

有数の研究者、文献執筆者であり、また世界の主要な糖尿病学会に度々貢献しているヤコブでさえも、小児1型糖尿病の診断に伴う学習曲線は急勾配でした。

ヤコブは次のように述べています。「私は糖尿病とともに生きることについて多く理解していると自覚していました。しかし、実際には、ヴィータが診断されるまで、慢性疾患とともに生きることがどんなことか、まったく理解していませんでした。彼女の血糖管理を手助けするため、また彼女の福祉を確保するために1日あたり100回の決断に直面しました。それは私にとって本当に驚くべき体験でした」

 

毎日の学習と新たな目的

 

この疾病を精神的に受け入れ、疾病管理に対応させるための日常生活を考え直すなど、ヴィータの診断はヤコブと彼の家族に重い犠牲を強いることになりました。しかし、混乱が落ち着き、家族が新たな現実に適応していくにつれ、ヤコブの見通しは、悲しい気持ちから前向きな気持ちに変わっていきました。

「私は、ヴィータが糖尿病とともに生きるための手助けをすることが、この疾病とともに生きている人々の真のニーズを教えてくれる、日々の学習体験であることを実感するようになりました」と、ヤコブはじっくりと思い出します。「私の仕事は常に重要なものでしたが、これまでと異なる新しい意味を持つようになりました。ヴィータの診断により、広い視野でみることができ、私は自分自身のスキルや、仕事に行くときに自分の娘や同じような人々のためのより良い未来に向かって努力することができるという事実に、感謝するようになりました」。

ヤコブが頭に思い描く未来には1型糖尿病の治癒があります。これは彼や彼の同僚が1998年以来幹細胞を用いて追い求めてきたものでした。この治療法について、20年間の研究やコーネル大学とのパートナーシップにより、研究チームは今「概念実証」を示すという段階まで導かれました。この概念実証とは、インスリンを産生する幹細胞をカプセル化し、それを用いて糖尿病を有するげっ歯類を治療するものです。

ヤコブは次のように述べています。「私達の努力がついに実を結び始めていることが嬉しいです。まだすべき仕事は多くありますが、数年以内にヒトを対象とした最初の臨床試験を開始できることを期待しています」

いかなる新たな治療法の開発とも同じように、成功への道筋には落とし穴もあり、良好なアウトカムが得られる保証もありません。しかし、ヤコブは期待にあふれ、ヴィータの毎日の糖尿病管理から解放されるような生活を想像しはじめています。

「ヴィータは現在5歳です。15年以内に私達の研究を実現できれば、彼女が20歳になるまでに1型糖尿病が治癒できるかもしれません。個人的な面で、私達の目標追求に私はこれ以上なく意欲が起きています」とヤコブは言います。