娘が糖尿病を受け入れた時
山口県 匿名希望
娘が小学校二年のクリスマスの前日のことでした。最近トイレが近く、喉が渇く娘を、軽い気持ちで小児科へ連れて行ったところ、先生から、大きな病院へ行って入院治療しなければいけないと言われ、何が何だかわからず、とても不安な気持ちで総合病院へ。そこで初めて「1型糖尿病」という病名を知らされ、この病気は一生治らない、一生インスリン注射をうたないといけない、コントロールが悪いと合併症がでてくる等と聞かされ、呆然としました。命にかかわる病気ではないので、きちんとインスリン注射をし、食事療法や運動療法をしていけば、普通の人と同じ生活ができますからと聞かされても、悪いことしか考えられませんでした。そして入院した日の夕食は禁止され、おなかをすかせた娘が点滴でつながれ、泣いているのを見るとかわいそうで、でもどうしてあげることもできませんでした。私もその晩は、これからの娘の一生を思うと、ふびんで涙があふれてきました。
食事制限をされインスリン注射を打たないといけない娘にとって、今までのようにお友達と一緒にプールやお祭りに行くというあたりまえのことが、とても苦痛になってきました。お友達のお母さんは一緒にと誘ってくれるのですが、娘と私が行くことによって、おやつ等の規制を他の子にもさせてしまうことが、とてもつらかったのです。これからはお友達ともうまく付き合うことができず、お友達も娘から離れていくのかなという不安を抱きながら、どんな時でも私が娘に付き合えばいいと自分に言い聞かせていました。
その当時は、私自身も周囲の人と会うことを避けていたような気がします。そして治療も、下関の病院ではなかなかコントロールがうまくいかず、入院中も多数の不手際があり若い主治医を信頼することができず、困っていた頃、藁をもつかむ思いで東京の国立小児病院へ。そこでは、この病気がどんなものであるかを、娘に包み隠さずわかりやすく説明してくれました。娘も少しずつ理解し、病気と向き合えるようになり、注射も二回打ちから三回打ちにすんなりかえることができました。子供に病気のことをしっかり理解させることは、治療において、とても必要だと実感しました。東京での三週間の入院生活を見ていて、以前の病院にいた頃とは比べものにならないくらい娘は穏やかな表情になり、私も安心しました。私が娘の病気を受け入れることができたのは、この頃だったと思います。
その後、福岡のこども病院を紹介していただき、そちらの先生には「糖尿病があっても何でもできる、誰よりも健康的な生活を送れるんだよ、家族もね」と教わりました。そして福岡で行われているサマーキャンプに参加することを勧められました。行く前は、娘も私もとても不安でしたが、現地に車が着いたと同時に、ヘルパーが「洋子」と大きな声で呼んでくれました。あまりの歓迎ムードに、はじめはとまどっていましたが、すぐにその雰囲気にも慣れ、みんなと言葉をかわしていました。参加している子供達はみな明るく元気で、病気があるようには思えません。それが何より嬉しかったです。
子供を預けた後、毎日どうしているのかなと思いながらも、私も血糖値や食事に振り回されることなく、ゆっくりした時間をもつことができました。血糖値が高くて娘を責めたりする自分を反省するいい機会でもありました。一週間の休息をいただいたような気がしました。そしてキャンプ最終日、迎えに行った時の娘の生き生きとした顔を目にした時には、参加させて本当に良かったと思いました。
帰りの車の中、娘が「私、この病気でよかったかもしれない」と言った時には、私は耳を疑いました。その理由を聞いてみると「1型糖尿病でなかったらサマーキャンプに参加できないから」という答え。本当に楽しく価値あるキャンプだったのでしょう。たった一週間なのですが、とても成長した娘を見るようでした。キャンプの後、娘は一生この病気と付き合っていけるのではないかと思うようになりました。とても自信をつけたような気がします。そしてキャンプを通じて、現在の主治医である南先生との出会いがあり、1型糖尿病でもとても積極的な人生を送られている姿は、とても励みになります。
発症して六年が経ちましたが、発症当時には考えられないくらい、何事にも前向きな楽しい毎日を送っています。インスリンや注射器具等、発症当時とほとんど変わらないのですが、信頼できる先生との出会いにより、病気に対する向き合い方、自己管理の仕方等、全く考え方が変わってくるものだと実感しました。これからは日本全国どこへいっても、患者が糖尿病ときちんと向き合っていける治療が受けられることを望みます。娘が将来の自立に向けて、前向きに生きることを教えてくれたサマーキャンプに参加できたことを幸せに思い、キャンプを支えて下さっているみなさまに心からお礼を言いたいと思います。
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