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糖尿病になってからの私


埼玉県 原田千裕さん

私が糖尿病とつきあうようになって、8年目になった。とても面倒臭いと感じるが、今まで1日たりともインスリン注射を欠かしたことはなく、幸い合併症も出ずに生活している。

私にはふとしたことから知り合った、同じ1型糖尿病を患う、ウズベキスタン人のアンナという28歳の友人がいる。彼女は8歳の時に発症し、以来ウズベキスタンで出来得る治療をしているのだが、旧ソビエト地域のウズベキスタン、生きていく為に必要なインスリンさえも闇市で購入しているとのことだった。彼女の視力は何度も手術を受ける程に低下し、腎臓は既に人工透析を受けなくてはならない程の極限の状態なのであるが、日本とは違い、ウズベキスタンでの透析費用は全て自己負担。1回につき2万円程かかる透析を、週3回も受けるということは一般市民には無理なのである。つまり、透析=死を意味するのだ。アンナの周りでは、同じ病気の友達が何人も亡くなっているとのことだった。

同じ病気でも、生まれた国が違うというだけで、こんなにも治療に差が出てしまうなんて。私はいつでも病院に行くことができるし、必要なインスリンや針は必要なだけ手に入れることができる。何不自由なく生活している自分が情けなく、そしてとても歯がゆく感じた。私は何かアンナの為にすることはないのだろうか?できることがあるのではないだろうか?

この話を同じ1型糖尿病の友人に相談したところ、友人は
「日本に呼んで治療をしよう。何かいい方向性が見つかるかもしれない」
と言い出した。来日費用や滞在費、入院費用は全て募金で賄うこととなった。
私が糖尿病を発症し、私の友人や周りの人達には糖尿病について正しい知識・理解を持ってもらえたと考えている。だから、誰もが糖尿病に対して悪口は言わないし、怖さをも理解しているから、糖尿病に対して軽率な発言があれば、怪訝な顔をする。

しかし、皆が皆、このような知識や理解を持っているとは限らない。私自身もこの病気になるまでは、不摂生の代名詞と思っていたし、入院すれば完治する病気だと思っていた。実際にはもちろん不摂生から発症する人も多いのだが、望んでもいないのに私のように一生インスリンを打たなければ生きていけない糖尿病を発症してしまう人もいるのだ。それを世間の人たちのほとんどが知らない。テレビなどの健康番組でせっかく取り上げられても、「足が腐る」「目が見えなくなる」という極論ばかりで恐怖をあおる。完治しない病気だが、うまくつきあっていけば問題なく生活できることや、なってしまえば同じ「糖尿病」であっても、成因が違うのに「食べすぎ」「不摂生」と言われて悲しんでいる1型糖尿病患者に対しての正しい理解が求められない内容ばかりで、とても悲しくなる。

募金活動を始めた時にも、この世間の糖尿病に対する知識に邪魔をされ、なかなか理解をしてもらうことができなかった。
「自業自得、何でそんな人を助ける必要があるの?」
そのような認識の人が多かったこと。
そのような人達の認識を覆すべく、自分がその糖尿病であること、毎日5回も注射を打っていること、なりたくなくても勝手になってしまう糖尿病もあるし、気をつけていても発症してしまう人達がいるということなども説明した。目から鱗状態の人も少なくはなかったと思う。

多くの人達の理解を得て、2005年夏、アンナは来日した。日本へ向かう飛行機に乗る時には、自宅から救急車で搬送された程、病状は悪化していた。都内大学病院で治療を受け、10日間程で退院。帰国時には日本ですっかり気に入ってしまった魚の西京焼をぺろりとたいらげる程に元気になっていた。

2ヵ月後、ある機関から協力を受け集まったインスリンや針を携えて、私はウズベキスタンを訪問した。アンナの主治医がいる病院へも、このインスリンや針を寄付したのであるが、そこで出会った1型糖尿病患者は、数ヶ月ぶりに新しいインスリンを手にしたとのことだった。ストックがなくなっていくのを、心細く感じていたとのことである。ほんの一握りの人だけであるが、同じ病気の人を救えたことをとてもうれしく感じた。

私が糖尿病になってしまったことは、とても悔しいと思う反面、糖尿病にならなかったら知りえなかった事を知り、ありえなかった人間関係を得たことは、とても良かったと感じている。今は何でも知りたいし、糖尿病についての正しい知識を、正しい理解を世の中の多くの人達に持ってもらうよう、そして、世界には私のように必ずしも適正な治療を受けることができる患者ばかりでないことを、たくさんの人達に知ってもらいたいし、彼らが私と同じように充実した毎日が送れるよう、何かしらの手助けができたらと考えている。


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