私の28年間 ~小さな変化の積み重ね~
神奈川県 春口千賀子さん
私は4歳で発症し、病歴28年目になりました。この28年間でインスリン製剤やインスリン注入器、血糖測定器をはじめ糖尿病の治療はものすごい勢いで変化してきました。糖尿病治療の変化ほど勢いはないのですが、私の糖尿病との向き合い方も28年間で少しずつ変化してきたので振り返りたいと思います。
私は発症してから数年間はノボレンテを1日1回ガラスの注射器で母に注射してもらっていました。そんな母からは「注射をしていることを他の人に話してはダメだよ」と言われました。当時の私には母がなぜそのように話したのか分からず、現在も真意は分かりません。しかし、周囲に糖尿病の人がいないこともあり、好奇な目で見られることを避けるためだったのかな…と思っています。母は「注射」をしていることを話してはいけないと言ったのですが、私は「病気のことを話してはいけない」と思い、糖尿病や注射のことを自分の口から一切話しませんでした。また、糖尿病のことや体調を聞かれることも嫌いになりました。けれども、注射を嫌がることはなく、変わったこどもだったと思います。
小学校では、担任の先生と養護教諭にだけ糖尿病のことを知らせ、クラスメイトには何も伝えずに6年間を過ごしました。中学・高校時代は学校側にもクラスメイトにも糖尿病のことは知らせずに「知らせないということは誰にも迷惑をかけないこと」と心に決めて学校生活を送りました。運動部に所属していましたが低血糖で倒れることもなく、話さなくても誰にも迷惑かけずに生活できたことが私の自信になりました。
専門学校に入学する際の診断書には、迷った挙句に糖尿病のことを記載し、提出しました。専門学校に合格しましたが、「卒業はできても糖尿病があることで就職はできないかもしれない」と学校側から言われました。私は「勇気を振り絞って診断書に病名を記載したのに、なぜそんなことを言われなければならないのか」「毎日元気に生活しているのに、就職できないかもしれないなんてひどい」と、とても悔しい気持ちになりました。そして「もう2度と病気のことは言わない」と決心しました。
小さい頃から「糖尿病じゃない子と変わらない! 注射をしていない人と私は同じ!」という思いが強くあり、その気持ちはずっと変わりませんでした。友達と同じように遊びやアルバイトに一生懸命になり、糖尿病や注射がある生活を感じさせないようにしてきました。専門学校を卒業し、無事就職しましたが、糖尿病のことは誰にも言わずに働き始めました。不規則勤務のためインスリンを打つタイミングは自分なりに考えました。けれども、血糖測定をすると高血糖が多く、「このままではいけない」と思うようになり、転院することを決め、私の転機になりました。
通院をし始めて「ヤングの会」があることに気付きました。興味はありながらも「傷の舐めあいだろう」という気持ちがあり、一歩を踏み出すことができないでいました。そんなときに職員の方から参加を勧められ、イベントに参加してみました。参加者はみんな元気で明るくて、私が思っていた「傷の舐めあい」とは全く違いました。私は食事の場面では普段通りにトイレで注射をしましたが、その場でさりげなく注射をしている参加者が多いことにとても驚きました。この会でいい意味でのカルチャーショックをたくさん受け、私の糖尿病についての考え方が大きく変化しました。1人で糖尿病と過ごしてきた時間を埋めるかのように、他のヤングの会にも参加するようになりました。会に参加するたびに新しい友達が増え、話の内容は糖尿病のことだけでなくプライベートなことにも及ぶようになりました。そして、糖尿病のことを自分だけの秘密にしておいても周囲は変わってはいかないこと、周囲が理解を示してくれないのではなく、患者である私たちのアピールが足りないこと等を糖尿病の仲間から教わりました。
私は糖尿病になったことを悔やんだことはありませんが、発症して23年目のときにやっと本当の意味で「糖尿病になってよかった」と思うことができました。そして、しっかりと糖尿病と向き合えるようになりました。現在の私は、「この人になら話せる」という相手にタイミングを見て糖尿病のことを話しています。以前の私と比較すると大きな進歩です。その頃から糖尿病のことをしっかりと勉強し始め、主治医の力を借りながらHbA1cも5.8%まで改善しました。
今は糖尿病である自分が大好きですし、糖尿病のある生活はとっても楽しいです。このように思えるまでにとても長い月日が流れましたが、1人で糖尿病を抱え、悩んでいる人達が1日でも早く糖尿病と仲良く生活できるようになること、糖尿病を持つこども達が成長したときに、もっと気楽に糖尿病を話題にでき、偏見のない社会になっていることを願っています。そのためにも、今できることを仲間と考え行動に移していきたいと思います。
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